国指定史跡
江釣子古墳群The eduriko ancient tumulus
交易で発展。独自の文化を映し出す蝦夷の古墳群。
奥羽山脈から東部に流れ下る和賀川と、岩手県の北部から南部に流れる北上川が合流する地域が北上市。「江釣子古墳群」は、その和賀川北岸に位置し、7世紀後半から8世紀にかけてつくられました。
その最大の特徴は、「蝦夷」(えみし)と呼ばれた人々の手で築かれた古墳であること。当時、「江釣子古墳群」があったエリアから北には蝦夷の人々が暮らしており、中央(大和朝廷)とは異なる文化を育んでいました。
それを物語るのが、「古墳」です。先ごろ世界遺産に認定された「百舌鳥(もず)・古市古墳群」に象徴されるように、一般的にイメージする古墳のカタチといえば前方後円墳ですが、「江釣子古墳群」の古墳は形状が異なり、小円墳となります。
さらに、前方後円墳が追葬できるようにつくられているのに対して、「江釣子古墳群」の古墳は追葬ができず一代限りとなっているなど、その作りや形状は異なります。
また、当時の蝦夷の人々の暮らしは、古墳の中に納められた副葬品を見るとよくわかります。
注目は、装飾類。国内の出土品としても非常に少ない貴重な西アジア製の金箔を挟み込んだガラス玉をはじめ、海外の製品を再利用したガラス玉を使った首飾りが多く発見されています。
その他、ロシア産の錫を原料につくられたと思われる腕輪や、国内でも島根県出雲産の瑪瑙勾玉(めのうまがたま)、さらに岩手県久慈産の琥珀などでつくられた装飾品も出土しています。
また、馬具や武器、農具なども副葬品に含まれていることから、狩猟・採集が中心だった暮らしから交易や農耕をもとにした暮らしへと移り変わり、中央とは異なる独自の文化をカタチづくっていった様子がうかがえます。
ちなみに、「江釣子古墳群」は近隣にある4つのエリアに120基以上もの小円墳があり、蝦夷の古墳群としては他に類を見ない規模となっています。
利用案内
- 江釣子古墳群 [国指定史跡]〒024-0071 岩手県北上市上江釣子20地割(北上市江釣子・北鬼柳・和賀町長沼)
江釣子古墳群のご見学、お問い合わせ
- 江釣子古墳群は、和賀川流域に分布する五条丸・猫谷地・八幡・長沼の各古墳群の総称です。径10m前後の小円墳が120基以上確認されており、発掘調査が行なわれた古墳からは勾玉などの装身具のほか武器、馬具、工具などが出土しています。7世紀後半~8世紀前半の築造。出土品は北上市江釣子史跡センターで展示されています。
- 北上市江釣子史跡センター:岩手県北上市上江釣子20地割146
- Tel/0197-77-2136 ※0197-64-2111・内線3720(北上市教育委員会文化財課)
- 開園時間/9:00~16:00
- 休園日/月曜、祝日の翌日、12~3月